9,ジャンプシュート基本形
ゲームではさまざまなシュート動作をみることができる。何をもって基本形とするかは指導上大きな問題である。
基本形というのは、シュートを成功させるのに効果的であり、誰でもがその動作を習得できるものであると考えられる。そして、その形が習得できれば、他のシュート動作の習得が容易になる。或いはその形を応用して変化し、結果として多くのバリエーションが生まれるものと考えられる。
誰もが習得できるジャンプシュートの基本形を典型例1としてあげたい。その動作を解説するためにジャンプシュートの運動経過を局面に分類すると
- (1)助走の局面
- (2)ジャンプ(踏み切り)局面
→バックスイング局面 - (3)フォワードスイング局面
- (4)フォロースルー局面
- (5)着地局面
に分類することができる。(図8)
A,典型例1
図8 ジャンプシュートの典型例1
①助走局面
- ・ボールを両手で保持しスピードを落とさないで走る。
- ・踏み切りに入る一歩前には重心を少し落として踏み切りに備える。
②踏み切り局面とバックスイング局面
- ・ジャンプシュートの難しさはこの局面にある。ジャンプのキー動作である踏み切りと投の準備局面であるバックスイングが同タイミングで行われるからである。
③踏み切り局面
- ・踏み切り足は右利きの場合左足で行う(右足で踏みきる場合もあるが、基本としては左足でおこなう)
- ・踏み切り足の着地は踵から着地する。
- ・振り込み足である右足はひざ頭を上方に突き出すようにあげる。ひざ頭が腰の位置まで引き上げる。上方へのジャンプの手助けになる。
④バックスイング局面
- ・ボールを後方上部に引き上げてバックスイングを行う。肘は肩の高さまであげ、上腕と前腕がなす角度を90度くらいにする。
- ・ボールの後上方への引き上げは、ジャンプの振り込み動作にもなるようタイミング良く鋭く行う。
- ・ジャンプのタイミングに合わせて、前述した腰投げで示したように、ボールを後方に引きながら腰も後方に回旋させて、ボールを前方に投げ出す準備をする。
- ・左手はボールを後方へ運ぶ中間局面で、前方に差し出すように伸ばす。
⑤フォワードスイング局面
- ・身体を使用する部分でものべたが、身体の大きい部分から小さい部分へとタイミングを遅らせながら(運動連鎖)身体をムチのようにしならせて、ボールに加速を加えてリリースする。
- ・オーバーハンドスローが基本であるが、相手との対応上サイドスローやアンダーハンドスロー等も使用される。また、身体の軸も右や左に倒しながらスローされることも多い。
- ・フォワードスイングの開始は左手の腰への引きつけによって開始される。
- ・空中での投げは、身体のバランスをとるために、一方向への動きは、逆方向の動きをともなって行われる。フォワードスイングの中間局面までは、左腕や右足が投げる方向とは逆方向の動きをし、最終局面の腕の振り降ろしに対しては左足が前方上へと動く。
⑥フォロースルー、着地局面
- ・リリース時に手先が最大のスピードとなり、ボールは人さし指か中指から放れていく。
- ・投動作は腕の振りのスピードが落ち、止まったところで終る。ジャンプ動作も、左足が着したところで終る。これらの動作は、意図的に意識が働くわけでなく、動作の終末として自然に行われる。
- ・ジャンプを終えた後、着地の体制によって、倒れたり、転がったりしてジャンプの衝撃を和らげたり、安全に身体を守る場合もある。
B,典型例2
図9はジャンプシュート動作の典型例である。典型例1に比べて、各局面において典型例1とは異なる運動経過(フォーム)を示している。これはトッププレーヤーにおいて見られるフォームであるが、ボールを片手で保持でき、体力的にも優れたプレーヤーに見られるものである。もし、こどもにこのようなフォームで無理なくシュートするものがいれば、典型例2のシュートフォームとして見る必要がある。誰もが習得できる基本的な典型例1と比較してその特徴を見てみる。
図9 ジャンプシュートの典型例2
①全体的な比較
典型例1は、投げに重点をおいた投げ方といえる。跳躍時に腰のバックスイングを行い、腰の先導によってフォワードスイングを行ってボールにより大きな力を加えようとしている。それに対して典型例2は、跳び上がることに重点をおいているといえる。ボールを片手で保持し、高跳びのように跳びあがり、上体のひねりによってフォワードスイングを開始している。典型例1が腰からフォワードスイングを行う全身型の、典型例2は上体を主に使って投げる上体型の投げ方である。
②助走局面;両手保持と片手保持
典型例1が両手でボールを保持しているのに対して、典型例はボールを片手で保持している。これを踏み切り局面の準備として捉えると、典型例1に比べて典型例2はより大きな腕の振り込み動作の準備としてみることが出来る。
③踏み切り局面;幅跳び型と高跳び型
・典型例1と2の大きな違いは、典型例1が助走スピードを落とすことなく幅跳びのように跳んで投げるのに対して、典型例は、助走スピードを抑え気味に高跳び型のジャンプをして投げていることである。
・沈み込みと後傾について
図10は踏み切り脚である左足着地の瞬間のフォームであるが、典型例2(図左側)は、踏み切る前から重心を下げ、そして身体を後傾させている。これは水平方向の動きを上方へ変化させる動きの準備をしているといえる。
図10 沈み込みと後傾
・右脚の振り込み動作
踏み切り後半の右脚の振り込み動作を見てみると、典型例1は脚を畳み込みながら(大腿と下腿となす角を小さく)斜め前方に跳んでいるのに対して、典型例2では、前方に大腿と下腿の角度を大きくとりながら(約90度)跳んでいる。(図11,12)
図11 典型例1の右脚振り込み
図12 典型例2の右脚振り込み
④バックスイング局面;直線型と円回転型
典型例1が直線型バックスイングであるのに対して、典型例2は、片手でボールを握り半円を描くようにバックスイングしている。この違いは、円回転型がランニングの腕振り動作とジャンプの振り込み動作を大きな動作で融合し、ジャンプの手助けをしている。どちらも、ボールの最終位置は変わらないが、典型例1は直線的に引くので、ボールを握れなくてもできるバックスイングである。誰でもが出来、時間的に素早くバックスイングを終えるメリットがある。この2つの基本的なバックスイングに対して、円回転型に近いL字型と前回り型がある。(図13)
図13 バックスイングの型